建築のシゴト

現場目線で語る! C値1.5→0.1を達成した建築家が教える「木造気密住宅」施工の原理原則

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こんにちは。一級建築士のHIITです。私は住宅業界で17年間、特に木造住宅の現場にどっぷりと浸かってきました。設計はもちろん、職人さんと一緒に汗を流す中で、C値(相当隙間面積)を当初の1.5c㎡/㎡から最終的に0.1c㎡/㎡まで改善した実績があります。

この記事は、日々現場で奮闘されている工務店や建築業者の皆様に向けて、現場目線で「本当に効く」気密施工の考え方をお伝えするものです。小手先のテクニックではなく、本質的な話をします。


気密施工の核心:「知る者」が施工し、「見る仕組み」があるか

結論から言えば、高気密住宅を実現するために最も重要なのは、以下の2点に尽きます。

  1. 「正しい気密の取り方」を知っている人が施工すること。
  2. それが正しく行われているか「チェックする仕組み」が整っていること。

当たり前に聞こえるかもしれませんが、これができていない現場が実に多い。そして、もう一つ重要なのが「姿勢」です。

気密測定をして、もし目標のC値が出なかったら?

「まあ、こんなものか」で終わらせてはいけません。

「なぜ取れなかったのか?」を徹底的に考え、改善し、次こそ達成する。

気密に対してストイックに取り組んでいる業者さんなら、これは当然のサイクルとして実践しています。この改善への執着こそが、技術力を高め、施主様の信頼を得る唯一の道だと私は考えています。


木造在来工法の気密はシンプル。「穴」を埋める、ただそれだけ

「木造の気密って、なんだか難しそうだ…」

そう思っていませんか? いいえ、木造在来工法の気密の取り方は、実は非常にシンプルです。

「木造建築物の特性や材料の性質を理解し、その原理に沿って、とにかく隙間を埋めていく」

これだけです。しかし、この「隙間」がどこにあるのかを分かっていないと、話になりません。現場に出ていないで、設計だけをやっている人には、この「生きた隙間」がなかなか見えないのです。

現場監督なら見逃すな! 具体的な「穴」の例

例えば、ごく基本的な例を挙げましょう。

  • 基礎の水抜き穴ベタ基礎を施工する際、降雨時に水が溜まらないよう水抜き穴を設けますよね。当然、この穴は空気が通ります。上棟後、基礎断熱(あるいは床断熱)の施工が進む中で、この穴を「確実に」塞いでいますか? 忘れた頃に、ここが大きな気密欠損の原因となります。
  • 柱の「節」コストを抑えるため、節(ふし)のある柱を使っている現場は多いでしょう。その節が「抜け節」や「死に節」だった場合、そこは外部と直通の穴です。特に化粧柱でない場合、見落とされがちです。そこを充填剤でしっかり埋めるか、そもそも節の無い材料(無節、もしくは上小節)を選ぶか。コストと性能のバランスですが、穴は穴として認識し、塞ぐ必要があります。
  • 各種貫通部エアコンのスリーブ、換気のダクト、配線、配管…。壁や床、天井を貫通する箇所は無数にあります。穴を開けたら、その周囲を気密テープや専用部材で「隙間なく」処理する。本当に、これら「当たり前」の積み重ねなんです。

「未来」の気密も守る、材料選定の視点

もう一つ、現場目線で重要なことがあります。それは、木造住宅は「動く」という事実です。

木材は乾燥収縮しますし、地震や強風などの振動でも動きます。この「動き」を無視して気密処理を行うと、数年後に必ず破綻します。

例えば、動きが発生する可能性のある取り合い部分(柱と梁、壁と床など)に、動きに追従できない硬化する材料(例えば、安価な変成シリコンの一部やアクリル系コーキングなど)を使ってしまうとどうなるでしょう?

木が動いた瞬間に、そこはパックリと割れ(切れ)、新たな隙間となってしまいます。

気密処理には、建物の動きに長期的に追従できる、伸縮性や可塑性のある気密テープや専用の充填剤を選ぶ必要があります。材料の性質を理解し、適材適所で使い分ける。これも「原理」を理解するということです。


C値改善の「正しい順番」と「目指すべき数値」

まずは「大きい穴」から攻める

気密処理は、やればやるほど数字(C値)は良くなります。これは間違いありません。

しかし、忘れてはならないのは、その手間=コストであり、最終的にそれを支払うのは施主様だということです。

だからこそ、効率よく気密性能を上げる「順番」が重要です。

先に、針の穴に糸を通すような細かい作業(例えば、コンセントボックスの小さな隙間)ばかりを追いかけても、C値は劇的に改善しません。まずは「大きいところから攻める」

床と壁の取り合い、壁と天井の取り合い、大きな開口部(窓)周り、ユニットバスの点検口周りなど、明らかに大きな隙間となり得る箇所から、確実に塞いでいく。これが鉄則です。

目標C値は「まず0.5」が合理的。しかし「0.1」も可能

では、C値はいくつを目指すべきでしょうか?

私個人の意見としては、まずはC値 0.5c㎡/㎡ (建物全体で名刺サイズ、約7cm角の隙間)を目指すのが合理的だと考えています。

これは、著名な松尾設計室さんも仰っていますが、「0.5までの改善は効率よく穴を小さくできるが、それ以上(例えば0.3や0.2)を目指すと、途端に手間ばかりがかかり、コストパフォーマンスが悪化する」という理由があります。施主様への費用対効果を考えた、非常に現実的なラインです。

ただし、と私は付け加えたい。

私がC値0.1を達成した経験から言えば、現場レベルで「気密施工のコツ」さえ掴んでしまえば、2人で1日集中して作業すれば、C値0.1を目指すことも十分に可能です。

これは「コストを度外視しろ」という意味ではありません。施工が標準化され、職人さんの習熟度が上がれば、0.5を目指す手間と0.1を目指す手間に、大きな差がなくなるフェーズが来る、ということです。

究極の「隙間なし」を目指すことは、断熱性能を最大限に引き出し、計画換気を完璧に機能させる上で、決して無駄ではありません。


まとめ:気密は「一喜一憂」せず「改善」を続けよ

気密測定は、ゴールではありません。あくまで現状把握の手段です。

C値が悪かったら、落ち込むのではなく、宝探しのように「どこに穴が残っているか」を探し、次の現場に活かす。

この地道な「改善のサイクル」を回し続ける姿勢こそが、プロの工務店・建築業者として、施主様の資産と健康を守る家づくりにつながると確信しています。

お互い、妥協のない家づくりを追求していきましょう。

ABOUT ME
一級建築士 HIIT
一級建築士 HIIT
心地よさの専門家
はじめまして。「心地よさの専門家」、一級建築士のHIITです。 17年間で400件以上の家づくりに携わった経験から、設計を請け負うのではなく、皆様が後悔しないための「羅針盤」として、中立な立場で専門知識を発信しています。 最高の家づくりは、健やかな心身があってこそ。このブログでは「心地よい家」と「健やかな暮らし」をテーマに、あなたの人生を豊かにするヒントをお届けします。
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